南天の果実(月刊Kacce11月号 散歩ウオッチング)

※この投稿は、月刊Kacce2017年11月号(vol.407)掲載記事の再編集です。

秋も深まり、木の実がよく目に付く季節になりました。

樹木の仲間には、花よりも果実の方が目立つ種が多々あります。そのうちのひとつが、メギ科ナンテン属のナンテンです。

初夏に白色の小さな花をびっしりと付けますが、あまり注目されることはありません。一方で、初冬の陽光を浴びながら、緑色を背景に、赤い実がつややかに輝く美しさは、ナンテンの晴れ舞台のようです。

ナンテンとその果実

ナンテンの果実は液果(果皮が多肉で水分の多いもの)で、大きさは直径7㎜前後。通常は赤色ですが、白色や藤色もあります。種子は5㎜前後で、ほぼ球形です。高さは大きくても3mほどで、茎はあまり太くなりません。

葉は三回奇数羽状複葉(うじょうふくよう)で、複数の小葉で構成される葉を指し、全体で1枚の葉と考えます。小葉は3出や羽状など、さまざまな形で付けます。

ナンテンとその果実

ナンテンは中国が原産地と言われていますが、日本にもともと自生していたとも、古くに中国から渡来した栽培種が野生化したとも言われています。中でも山口県萩市川上の「川上のユズおよびナンテン自生地」は、国の天然記念物に指定されています。

都会のナンテンは庭木に多用され、特に古い庭でよく見かけますが、赤く熟した果実は小鳥が大好物のため、ゆっくり眺めることは難しいかもしれません。

種子によって、その生育地域を広げていくナンテンですが、新たに種子から育てる時は、果肉に発芽を抑制する物質が含まれているので、果実をよく洗ってから、種子を春にまいてください。

難を転じる植物とも言われるナンテンの赤い実を眺めながら、晩秋の散歩をお続けください。

森野かずみ

この投稿をシェアする
  • URLをコピーしました!
目次