※この投稿は、月刊Kacce2017年10月号(vol.406)掲載記事の再編集です。
地上に森林が現れたのは、今から3億5000万年前と言われています。
この当時の植物が分解されないまま埋没し、途方もない年月をかけて醸成されたのが石炭です。その昔に大量の石炭ができたのは、菌類がまだ十分に発達していなかったからとも言われています。
その後、菌類は植物と共に進化して、多くの植物の根と共生関係を保ち、有機物を最終的に土に還す重要な役割を果たしています。公園の樹林の床など、散歩中の足元では植物・動物・菌類の巧みな循環によって、永続的な自然界の調和が保たれています。
菌類のうち、比較的大型の子実体(しじつたい)を形成するものを「キノコ」と呼びます。大型とは、肉眼で観察できる程度のもので、子実体とは胞子を作る器官のことです。
秋の雨上がりなど、散歩中にもよくキノコは見かけますが、大まかに分けると食用が約700種、毒キノコが約100種あるそうなので、観察だけにとどめた方が無難です。
ちなみに、樹林の多い区内の公園で猛毒のキノコ「ニガクリタケ」を見かけました。特に秋は多いのですが、ほぼ通年発生します。死亡例もあるキノコで、生では猛烈に苦いのですが、熱を通すと苦くないそうです。
ある意味でキノコの多さは、目には見えない地中の豊かさを表わすものなのかもしれません。
体内にたまった余分な物を吸着して排出させる働きがあり、“森の掃除屋”とも言われるキノコを観察しながら、秋の散歩をお続けください。
森野かずみ