※この投稿は、月刊Kacce2024年6月号(vol.485)掲載記事の再編集です。
初夏の風物詩であるホタル狩りは、もともとはホタルを捕まえる遊びのことでしたが、現在ではホタルを鑑賞することを指すようです。関東では今月初旬から、明るい光で高く飛ぶゲンジボタル、その後、ほのかな光で低く飛ぶヘイケボタルが見られますが、温暖化の影響で入り交じるかもしれません。
公園などの水辺緑地を散歩していて見かけるのが「ミゾソバ(溝蕎麦)」。タデ科タデ属またはイヌタデ属の一年草です。名前の由来は、花や実が蕎麦に似ているから。花の形からコンペイトウグサ、葉の形からウシノヒタイとも呼ばれ、いずれも見た目から付けられた名前です。今は田んぼの水路や小川はコンクリートで固められていることが多いですが、まだ土だった頃はよく見られました。区内では今や珍しい存在となり、郊外や山地の水辺で繫殖しています。
草高は30㎝〜1m。茎には下向きの刺 (とげ)が多く、刺を絡めて立ち上がり、下部は横に這います。葉はほこ型で互生し、基部は耳状に張り出し、葉の先端は尖って小刺や星状毛があります。花は枝先に10数個集まって付き、花被は5裂し、裂片の上部は紅紫色、下部は白色。花は花弁に見えますが、タデ科植物は全てが萼 (がく)です。地下の匍匐茎(ほふくけい)に閉鎖花(開花せず、その中で自家受粉し実を結ぶ)を付けて親の育成場所に発芽し、地上の花は虫媒花で結実し、水流などで運ばれて他の場所で発芽します。まさに適材適所の種の付け方です。
6月といっても真夏日が混じる今日この頃。直射日光をなるべく避けて散歩をお続けください。
森野かずみ