イジュ(月刊Kacce6月号 散歩ウオッチング)

※この投稿は、月刊Kacce2023年6月号(vol.473)掲載記事の再編集です。

 そろそろ梅雨入りの頃。アヤメ科の花菖蒲は江戸時代に野生種から改良された園芸品種で、ピンクや紫、白の花びらの中央に見えるわずかな黄色が目印です。品種は2,000種以上とも言われています。ちなみに端午の節句に用いられる葉菖蒲はサトイモ科ショウブの葉で、別の種です。

 6月はアジサイが咲く季節でもあり、梅雨入り前の青い空と青い花は、まさしく“青の季節”。「紫陽花や帷子時の薄浅黄」という芭蕉の句が思い出されます。帷子時(かたびらどき)は麻の一重の着物を着る時期を指し、浅黄色(あさぎいろ)は新選組の羽織の色でもある藍染の薄い水色。紫陽花の語源はアジ(集)サイ(藍)で、別名「四葩(よひら)」とも呼ばれます。

イジュ

 今月は街中の散歩で見かけたツバキ科の「イジュ」(別名:ヒメツバキ)をご紹介。奄美大島以南に自然分布し、沖縄や台湾の亜熱帯に自生する樹木です。樹皮は暗褐色で大きな皮目が散在し、新しい枝は緑色。長い楕円形で鋸歯縁の葉は枝先に集まって互生し、葉身は8〜16㎝。花は直径5㎝前後の白色で枝先にまとまって見えますが、枝先の葉柄に付いているのは1個の花です。花弁は5、6個で浅いお椀状にへこみ、基部はわずかに合着。雄しべは多数で雌しべは1個、5〜6個あるガク片は花弁と一緒に落下します。最近は、東京でも植栽が増えているようです。

 五月晴れは、梅雨の合間の気持ち良い晴天。清々しい気持ちで散歩をお続けください。

森野かずみ

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