〜600年の時を超えて〜練馬城の歴史をたどる

2024年7月8日

2023年５月に開園した「練馬城址公園」は、94年続いた遊園地「としまえん」の跡地にできた都立公園。さらにさかのぼること約600年、室町時代には豊島氏が築いた練馬城があった場所なんです。そんな地元の歴史をたどるツアーに参加してきました！

※「月刊Kacce」2024年6月号に掲載した記事を再編集したものです。

ガイドと巡る歴史ツアー

「練馬城址公園」の名称を見て、初めて練馬城があったことを知る人も多いのではないでしょうか？　5月5日に開催された「練馬城の歴史ツアー」は、練馬城址公園を起点に、練馬城にかかわるスポットを実際に歩きながら歴史を学ぶというものです。
案内してくださったのは、としまえんの歴史を研究している岡田さんと、郷土史家の葛城さんのお2人。約100年前に開園したとしまえん（開園時の名称は「練馬城址豊島園」）創成期のエピソードや、室町時代の城の詳細など、興味深い話が盛りだくさん！

独特の地形に魅せられて

練馬城を築いたのは、平安から室町時代にかけて勢力をもっていた豊島氏。石神井川に突き出した舌状台地が城山で、沢が流れ込んだ東西の深い谷に挟まれ、北側は川に沿った低湿地帯だったため、防御に適した地形でした。練馬城のおおよその規模は、南北300m、東西150〜200ｍだと考えられているそうです。

1477年、豊島氏が太田道灌に敗れて練馬城は廃城となりますが、時代を経てその地形に魅せられたのが、としまえんの創業者、藤田好三郎氏でした。練馬城址の高台と、石神井川が流れる地形を気に入って土地を購入。広く一般の人々に開放するために整備し、1926年（大正15年）からとしまえんの歴史が始まります。

開園以降、段階的に低湿地や池などは埋められ、谷もならされて、当時の地形はわずかに名残りが見られる程度に…。だからこそ、想像力を膨らませながら歴史に思いを馳せる楽しみが尽きないのかもしれませんね。

約2時間半のツアーはとても楽しく、充実した内容で大満足でした。知られざる歴史を聞きながら歩くと、見慣れた地元の風景も違って見えるから不思議♪

練馬城の歴史をたどるスポット紹介

1 .どんぶり坂
練馬城の東の谷にかかる、すりばち状の坂道。道の南側には湧水が見られ、すぐ近くの向山庭園で利用されている。東の谷と西の谷のそれぞれの南端にはかつて豊富な湧水があり、両方の谷は城を守る“天然の水堀”になっていたと考えられる。

2. 古城の塔
としまえん開園時から唯一残っている建築物。開園当初は史跡のため練馬城址には建物が建てられず、イギリス式花壇が造られた。花壇の脇に食堂を造る際、高台のため給水塔を設置することになり、食堂と一体でイギリスの古城を模して建てられた。後年は「木馬の会」の事務所となり、コスプレの撮影スポットとしても有名に。現在は練馬城址公園内からその一部を見ることができる。

3 .練馬城址
練馬城の内郭は、石神井川の南側の斜面の上にあった（写真左手の森のように見える部分）。城の出入口を守る小陣地、馬出（うまだし）があったことが確認されており、日本最初期の馬出だと言われている。この時代は、城といっても粗末な平屋だったと考えられ、まだ天守閣のような立派な建築物ではなかったそう。

4 .栗山
東の谷を隔てた台地に、練馬城の出城（でじろ）があったという伝承があるが、遺構は確認されていない。「練馬」の地名の由来として、この地で馬の調教をしていた（練った）からという説や、東の谷の集落にあった「乗瀦（のりぬま）」の地名がなまって「練馬」になったという説などがある。

5 .白山神社
境内にある大ケヤキは国指定天然記念物に指定されており、源義家が奥州征伐へ向かう際、戦勝を祈願して奉納したと言われている。もともと6本あったが、現在残っているのは1本のみ。

6 .石神井川
としまえん開園時は、現在のスタジオツアー東京のエントランス付近にボート池があり、そこに導水するための堰（せき）があった。堰の下流ではシジミが養殖されており、来園者は自由に獲ることができたという。

7 .練馬城の外堀跡
東西の谷をつないでいた外堀の名残りと思われる空堀の一部が、昭和初期の資料には描かれていた。現在は住宅と道路になっており、遺構は残されていない。

8. 鎌倉みち
旧としまえんの正門前を南北に走る細道は、鎌倉みちの１つ。あの上杉謙信も、小田原攻めの際、大軍を率いてここを通ったと伝えられている。

9 .練馬城の外堀跡
「理想的田園生活」を実現するため、1924年に開発された住宅地。名称は、練馬城址の南側に位置していたことに由来する。城の外堀の内側にあたるエリアなので、城があった頃は家臣団の館や施設が置かれていたと考えられる。