※この投稿は、月刊Kacce2018年8月号(vol.416)掲載記事の再編集です。
今年は観測史上初めて6月中に関東地方が梅雨明けし、海開き、山開きが後になってしまいました。海の家も慌てて開店したようですが、山野の植物も慌てているかもしれません。
ちなみに「海の家」の呼び名は全国区だと思っていましたが、山形県から兵庫県の日本海沿岸地域と三重県では、浜茶屋(はまぢゃや)と呼ぶそうです。
7月頃から水辺の近くでイネ科のジュズダマ(数珠玉)を見かけることがあります(最近は護岸や川底がコンクリート化され、少なくなっていますが…)。
果実を包んでいる苞鞘(ほうしょう)が硬く、芯を抜いた穴にちょうど針が通るため、糸でつないで数珠にしたことからこの和名が付きました。別名トウムギ(唐麦)とも呼ばれます。
熱帯アジア原産の多年草で、高さ1〜2m位になり、葉はトウモロコシに似て中脈は白。
茎の上部の葉鞘から花序の枝を数個出し、先端に壺形の苞鞘を付けます。
この壺の中で雌性の小穂(しょうすい)は成熟して外に白い柱頭だけを出し、雄性の小穂は壺形の苞鞘から伸び出た柄の先に付きます(写真参考)。
小穂が単性で、雌性の小穂は壺の中という、イネ科の中では最も特異な形です。
ジュズダマと一見して同じ植物に見えるのがハトムギ(鳩麦)。1年草でジュズダマの栽培変種です。
こちらは畑や菜園でしか見かけませんが、苞鞘の中の、麦にそっくりな果実を炒ったものがハトムギ茶で、果皮を除いた種子が生薬のヨクイニン(薏苡仁)です。
ジュズダマとの見分け方は、花序が少し垂れること、壺がやや細長いこと、成熟した壺が指でつぶせることです。
酷暑が続きそうですので炎天下の散歩は避け、朝夕の時間に散歩をお続けください。
森野かずみ