垣通し(月刊Kacce4月号 散歩ウオッチング)

※この投稿は、月刊Kacce2019年4月号(vol.424)掲載記事の再編集です。

 3月の彼岸を過ぎた頃から暖かい日が続いて花見となりますが、必ず「花曇り」「花冷え」と寒の戻りがあり、雨も降ります。

 5日は二十四節気の「清明」で、20日は「穀雨」。清明は万物が春の陽光を受けて生き生きとし、清らかで明るい時候のことで、この頃の雨を杏花雨(きょうかう)と呼びます。穀雨は田畑を潤し、穀物の成長を促す恵みの雨という意味を表しています。

 この時期の公園散歩で時々、垣通し(カキドオシ)を見かけます。シソ科カキドオシ属の多年草で、茎や葉をもむといい香りがします。和名の由来は、花のあと茎がつる状に伸びて垣根を通り抜けることから。別名はカントリソウで、子どもの癇(かん)の虫を取る薬にしたことから来ています。



カキドオシ

 茎は四角形、葉は対生で長さ2㎝前後、幅2~3㎝の腎円形で鈍い鋸歯があります。花は2㎝前後で葉腋(ようえき)に1~3個付き、淡紫色で唇形花(しんけいか)。下唇は中裂して側片は小さく、中央裂片は大きく前に突き出し、濃紫色の斑紋と白い毛が目立ちます。

 おしべは4個あり、正面から見ると上唇に沿って並んでいます。がく片の先端は刺状で、紫色の脈が15あります。花のよく似たハエドクソウ科のトキワハゼやサギゴケを大きくした感じですが、葉の形や下唇の斑紋で区別できます。ヨーロッパ原産の斑入りの種は、見た目の美しさから属名の「グレコマ」の名称で園芸やグランドカバー用に栽培・販売されています。

 公園は作られてから30年もすると、草刈りを頻繁に行わない草地には野原や道端で見かける野草や帰化植物が多くなります。

時の流れも感じながら、散歩をお続けください。

森野かずみ

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