大花蕨(月刊Kacce10月号 散歩ウォッチング)

※この投稿は、月刊Kacce2024年10月号(vol.489)掲載記事の再編集です。

 今月の8日は寒露。夜が長くなり朝露が寒さで霜になる直前の状態のことで、空気が澄み渡り清々しい秋晴れの日が増える頃です。落葉樹が多く、昼夜の寒暖差が大きい日本では、公園などでも紅葉が楽しめます。“紅葉狩り”と言いますが、“狩る”には花や草木、果物などを探し求めるという意味があります。旬の果物は秋色の「柿」。ミカン以上にビタミンCが豊富であることはよく知られていますが、βカロテンによる抗酸化作用もあるので大いに食してください。

 最近気付いたのですが、公園などの林床のやや湿った日陰で、シダ植物の「オオハナワラビ(大花蕨)」(ハナヤスリ科ハナワラビ属)が増えているようです。夏に枯れる冬緑性(とうりょくせい)で、葉はこの仲間の中では大きい方です。いわゆるシダの葉を1枚出し、同じ柄に胞子葉を高く出します。下の葉は栄養葉で3〜4回羽状深裂し、やや厚い草質で濃い緑色。羽片は平面的で葉の縁には鋭い鋸歯があります。種子植物のおしべやめしべに相当する器官である胞子葉に葉面はなく、軸に直接丸い胞子嚢(のう)がついています。アカハナワラビ、フユノハナワラビもよく似た仲間です。冬に枯れる夏緑性(かりょくせい)の仲間には、ナツノハナワラビ、ナガホノナツノハナワラビがあります。ハナワラビ(花蕨)という名は、胞子葉を花に見立てたという説が有力です。

オオハナワラビ
胞子葉(胞子嚢)

 地球上にシダが誕生したのは、約4億年前になります。日本では約630種のシダが記録されていますが、花も実もなくどれも同じに見えます。身近なシダを観察しながら、散歩をお続けください。

森野かずみ

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