※この投稿は、月刊Kacce2020年9月号(vol.440)掲載記事の再編集です。
植物体は、茎と葉のシュート(shoot)と根(root)で成り立っています。茎と葉は器官的には別物ですが、必ず一緒に成長するので2つをまとめてシュートと呼びます。
シュートの頂端で盛んに細胞分裂する部分を成長点と呼び、これが広い意味での芽になります。芽は付く位置によって頂芽と腋芽に分けられます。シュートの頂端にある芽が頂芽で、これが伸びると同じシュートの続きとなり、葉の付け根にある腋芽が伸びると別のシュートになります。頂芽が伸びているとき腋芽は休眠状態であることが多く、頂芽に損傷があると腋芽が成長を始めます。
シュートの先端が短縮して特殊な形に変わったものが花で、めしべの根元には子房があります。被子植物の胚珠は大胞子葉で包まれ保護されており、大胞子葉に当たるものを心皮と呼び、1個から数個の心皮が合わさって胚珠を包んだ全体を子房と呼びます。子房ができたことが被子植物の大きな特徴です。
中国原産の「アオギリ(青桐)」(アオイ科アオギリ属)は果実が5片に分かれていますが、それぞれが心皮で、葉の変形であることがわかります。縁に付いている種子は胚珠だったものです。種子は心皮ごと風に飛ばされて親から独立するため、その様子は「種子を乗せた空飛ぶボート」とも表現されます。
アオギリの名の由来は、幹が青緑色で葉がキリの葉に似ていること。幹はシラカバ、ヒメシャラと並んで三大美幹木とされ、東京では公園や街路樹の植栽でよく見かけます。老木になると幹の青緑色は変化していくので、樹を見上げ色を確かめながら散歩をお続けください。
森野かずみ