※この投稿は、月刊Kacce2023年1月号(vol.468)掲載記事の再編集です。
新しい年に、ひんやりとした空気の中でふと目を留め、耳を澄ませば、ごく身近なところに「兆し」や「名残」があることに誰でも気付くでしょう。食事や散歩、仕事など日々の生活を大切にしながら意識して暮らしていると、自然に見えてくる“感性の世界”です。
自然界には、人間が計り知れない精妙な摂理が存在しています。地球温暖化もその1つでしょう。温暖化は地球にとって困ることではなく、人間にとって困ることであり、経済活動を優先する限りは止まりそうもありません。
今月は、下旬頃に咲く2つの花を取り上げてみました。1つ目は、ヒガンバナ科スイセン属の「ペチコート水仙(別名:原種スイセン)」。別名が表すように、原種または原種に近い園芸種で流通しています。原産地はヨーロッパ南西部の地中海沿岸辺り。スイセンなので有毒植物です。草丈10〜20㎝の非常に小さなスイセンで、花色は白と黄色、花冠は3㎝前後、後ろに6枚の細長い花被片があり、前にろうと状の副花冠を開きます。花の形からペチコート水仙と呼ばれ、練馬区立四季の香ローズガーデンで見られます。
2つ目は、ツバキ科ツバキ属の「椿 数寄屋(別名:江戸椿)」。いわゆる侘助と呼ばれる栽培品種群の1つで、花色は淡桃色。ヤブツバキと中国原産のピタールツバキの雑種起源とも言われ、花は小さく半開き状で花粉を生じず、葉はやや細長いのが特徴です。練馬区立夏の雲公園内ツバキ園で見られ、どちらの花も陽だまりを感じる日の観察がおすすめです。
2つの小さな花に「兆し」を感じながら散歩をお続けください。
森野かずみ