アブラチャン(月刊Kacce3月号 散歩ウオッチング)

※この投稿は、月刊Kacce2023年3月号(vol.470)掲載記事の再編集です。

 雨に濡れた椿の花が鮮やかに見える季節です。美しい姿のまま花ごとポトリと落ちる「落ち椿」…まさに感性の世界です。

 サクラが咲き始める頃、葉の展開前に淡黄色の花をまとめて3〜5個くらい付けるのは、クスノキ科クロモジ属の「アブラチャン(油瀝青)」。雌雄異株の落葉低木で、和名の「アブラ」は、樹皮や実に油が多く、その油を絞って灯用に使われたことに由来しています。「チャン」は瀝青(れきせい)のことで、ピッチやコールタールなど石油や天然ガスを練り合わせた塗料の総称です。

アブラチャンの雌花( 練馬区立あかね雲公園の東側にて)
アブラチャンの冬芽( 練馬区立あかね雲公園の東側にて)

 ルーペで観察すると、雌花にはやや透明感のある花被片が6個と雌しべが1個、花粉を付けない雄しべが9個あります。雄しべは外側に6個、内側に3個並び、内側の花糸の両側に黄色の腺体が付いています。花の時期は、同じクスノキ科クロモジ属の「ダンコウバイ(檀香梅)」とよく似ていますが、ダンコウバイには花序に柄がなく、アブラチャンは柄があるので見分けられます。アブラチャンは山地の山すそや落葉広葉樹林などに多く、都市部ではあまり見かけない樹木です。

スズメ

 自然に散った花びらの中に、花のまま落ちているサクラがあったらスズメの仕業かも。くちばしの太いスズメは蜜をうまく吸えないので、花の付け根に穴をあけ、萼(がく)ごと花を落とします。あまり見かけなくなったスズメですが、見かけたら話かけたりしながら春の散歩をお続けください。

森野かずみ

この投稿をシェアする
  • URLをコピーしました!
目次