※この投稿は、月刊Kacce2023年11月号(vol.478)掲載記事の再編集です。
今月8日は「立冬(りっとう)」。冬が始まり、山からは初冠雪の便りが届いて初霜の降りる頃ですが、今年はどうでしょうか。例年では、公園や街中を歩くと濃緑の葉に赤い花の樹木を見かけますが、今年は遅れ気味になるかもしれません。花の主は、花の盛りが早春の「ツバキ(椿)」と、初冬の「サザンカ(山茶花)」。サザンカは園芸種ですが、両種の花を同時期に見られるのが11月頃です。
ヤブツバキ(ツバキ科ツバキ属)の花弁は5個あって基部で合着し、花全体がお椀型。多数の雄しべが合わさって筒状の構造をしています。11月から4月頃まで咲き続け、花が終わると花弁と雄しべがくっついたまま丸ごと落下します。日本では数少ない鳥媒花で、メジロやヒヨドリなどをよく見かけます。
園芸品種のサザンカ(ツバキ科ツバキ属)は、樹高が高いのが「タチカンツバキ(立寒椿)」で、呼称は勘次郎。樹高が低く植込みに多用されるのが「カンツバキ(寒椿)」で、獅子頭と呼ばれています。サザンカは花弁がほとんど合着せず水平に開き、花が終わるとバラバラに散ります。サザンカの特徴が顕著なのに、名前にツバキと付くのでややこしいですね…。園芸種は見た目重視のようです。なお、ツバキとサザンカの違いは1枚の葉でもわかります。太陽光に透かして側脈まで見えるのがツバキ、主脈しか見えないのがサザンカです。
白色や桃色のサザンカなども眺めながら、短い秋の散歩をお続けください。
森野 かずみ